Tokachi Millennium Forest 十勝千年の森 北海道ガーデン

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草花の生命力を生かした森

森の中でひっそりと眠っていた草花の生命力を生かし、さまざまな視点から森の新たな楽しみ方を発見する場です。川のせせらぎや鳥の声に耳を澄ませば、ゆったりとした森の時間が流れます。

Concept

コンセプト

ミズナラを中心とした広葉樹の森は、長年人手が加えられず放置され、林床にクマザサが生い茂っていた。密生していた森を間伐し、ササを刈り、落ち葉をかき、長い時間をかけて森の手入れを行ってきた。やがて、太陽の光が林床に注がれるようになり、地中に眠っていた草花の種子が芽を出し、さまざまな野の花の咲く森へと甦っていった。

従来の庭づくりは、新たな植物を導入する「足し算」のデザインが生かされてきた。フォレストガーデンは、高野ランドスケーププランニングによって森の特性を見極め、その魅力を育てていくための庭づくりが計画され、自然の営力を生かした「引き算」のデザインを試みている。

世界中のさまざまな国々において、庭園は単に「美」を楽しむだけでなく、庭での営みや庭をたしなむ作法などの文化が築かれてきた。この森の庭では、新しい時代の庭園文化を築くべく、ところどころに森の魅力を引き出す小さな拠点を設け、訪れる人々に新たな森の楽しみ方を提案している。感覚を呼び覚まし、川のせせらぎの音の変化に耳を澄ませながら、ゆったりと流れる森の時間を感じることができる。

Design & Construction Process

デザインプロセス

高野ランドスケーププランニングが手がけるフォレストガーデンのデザインは、森の特性を把握するため、急な環境の変化を避け、段階的な整備を計画するところからはじまった。第1次整備として、枯損木や密生する木々の間伐と林床のササ刈りを行い、森の特性を入念に調査。その後、第2次整備としてその特性を引き出す施業を展開していった。

林床管理によって育ちはじめた自生種の草花や木々の植生の分布を把握し、水辺や草原などの魅力あるポイントを見つけ、森の特性を理解した上で、それらを楽しむための小さな拠点をデザイン。全体を結ぶ園路を散策することによって、訪れる人々は連続的で効果的な視覚体験ができるよう設計されている。

cTakano Landscape

森の門

2本のミズナラの大木が立つ「森の門」はフォレストガーデンのエントランス。円形に積み上げた森の間伐材と景石を設え、訪れる人々を迎えている。門を通り、チップ敷きの園路を進めば、ここから森の庭の散策がはじまる。

周辺にはニリンソウの群落があり、継続的な林床管理によって年々生育範囲が広がっている。

森の望楼

株立ちの木に設けられたユニークな2段のデッキは、木の上から森の庭全体の林間の風景や林床を俯瞰で楽しむ場。フォレストガーデンには、さまざまな視点によって風景の変化を感じることができる仕掛けがところどころに設けられている。「森の望楼」では、まるで木登りをしているかのような視覚体験が楽しめる。

水辺を楽しむ

敷地内には日高山脈上流からつながる4本の小川が流れており、それぞれが異なった表情を見せている。水量が多く勾配のある川では、水の流れや動き、水音を楽しむことができる。水音は立つ場所によって音が変化し、「せせらぎのオーケストラ」が奏でられているようだ。

幅広い河床を持つ場では大きな水面を創出しやすいため、流れをせき止めて段階的に水面をつくり、風景を映し出すように設計された。また、このような水辺は多様な生物が生息する環境を生み出す。

幅の狭い愛らしい小川が蛇行するエリアでは、ありのままの姿を楽しんで散策できる。

フォレストガーデンには、水辺の風景や水音をゆっくりと楽しみながら休むことのできるデッキやベンチが点在する。渓流沿いには、流れを望む方向で2つのデッキが設けられ、水音に耳を傾けながら茶会が楽しめる。夕暮れ時には西日に光る水面が美しい。

森の基壇、森の盆

この森の景色の魅力のひとつは、ゆったりと下がっていく林床と森の広がりを楽しむことにある。視点のやや高い位置に「森の基壇」とやや低い位置に「森の盆」を設け、ミズナラでつくった水路によってそれらを結び、訪れる人々の視線を誘導するよう設計。視点の高さによって変化する風景が目の前に広がる。

「森の盆」造成工事の様子。
低い位置にある「森の盆」に立つと、目線の高さに植物たちが見られ、地形に囲われているかのような空間を体感できる。


「森の基壇」から「森の盆」へ、そして森全体の広がりのある風景へと視線を導く仕掛けとして、ミズナラの間伐材を設置。ミズナラは丁寧に彫られて水路となり、「森の基壇」と「森の盆」を結ぶ。設計した高野文彰氏が現場を確認。

2008年フォレストガーデン竣工当時。ミズナラの水路は近くの川から水を引いており、バルブで水量調節が可能となっている。

十勝千年の森の敷地内で採れる麦飯石と森の間伐材を使用し、「何も持ち込まない、何も持ち出さない」庭づくりを実践している。

森の大テーブルとバー

古来、それぞれの国の文化に育まれて、庭ではさまざまな営みがなされていた。その新たな森の楽しみ方の提案として、木漏れ日の中で食事やお茶、ワインを楽しむ場となる大テーブルとバーカウンターがつくられた。ミズナラと麦飯石でつくられた大テーブルには、キングとクイーンのイスをデザイン。ゲストを迎えて森の中で開かれるパーティーの様子が目に浮かぶ。

白樺広場

ササの間を縫うように歩くと、徐々に明るい林縁部に至る。ここではシラカバとカエデ類を残して除間伐を行い、光に溢れた空間を展開。間伐材を円形に積んだ広場には景石を配し、草原との接点にあるミズナラの 大木へと視線を導く。さらに奥に広がる草原には、長澤伸穂氏によるアート作品「時の彫刻」が訪れる人々を優しく迎え入れる。

笹の海のデッキ

クマザサを林床の植物の生育を妨げる否定的な要素としてとらえるのではなく、その美しさを利用して設置された3カ所のデッキは、笹の海に浮いたような感覚を楽しめる。ササを残すことによって、森の深みと、開かれた空間と閉ざされた空間との風景の移り変わりが感じられる。

Maintenance

メンテナンス

毎年林床管理を継続して行うことで、自生種の生育環境は変化しつづけ、より豊かな植生を持つ森へと育っていく。除間伐については地元の清水町森林組合の協力のもと、木々の密生状態に合わせて施業。

林床管理は、早春の植物の芽出しが始まるまでに枯損木や折れた枝を撤去し、園路のチップを敷くことからはじまる。ニリンソウなど一部の植物は開花後、結実して種を落とす時を見計らい、初夏に草刈を行う。そうすることで他の植物との生育競争が軽減され、林床の種子に光があたり、徐々に群落が広がっていく。

また、一部の植物については、夏から秋にかけてそれぞれの結実する時に合わせて林床に種の採り蒔きをしている。秋には、ササを残すエリア以外はすべて刈り取り、その年の植物の生育状況に合わせて落ち葉かきを行う。十勝千年の森メンテナンスチームのスタッフ総出で行う林床管理を無事に終えれば、まもなく森は厳しい冬を迎える。

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デザイン
高野ランドスケーププランニング
撮 影
大泉省吾、佐々木智治、十勝千年の森